こんにちは。三重県の中小企業診断士で経営支援、組織研修や業務改善研修をしていますエスモットです。
「整理整頓が大事」は感覚で分かる。でも、「どれくらい効果があるのか」を数字で言えないと、経営判断や社内の説得には使えません。
第4回では、国内外の実証データと業種別の事例を紹介します。
製造業の事例
ケース①:プラスチック袋製造工場(5S実施後の作業時間変化)
5Sを実施したプラスチック袋製造工場では、全体の作業時間が削減されました。
- ブロー工程:8%削減
- 印刷工程:18%削減
同一工場の前後比較のため、外部要因の影響が少ない比較的信頼性の高いデータです。作業時間の削減はそのまま生産コストの低下につながります。
ケース②:ゴム製品メーカー(5S導入前後の4年間縦断データ)
セルビアのゴム製品製造会社の子会社で、5S導入後の変化を数年にわたって追ったデータがあります。
| 指標 | 変化 |
|---|---|
| 労働生産性指数(2008年を100とした場合) | 100 → 129.4(2011年) |
| スクラップ費(実質ベース) | 2008年→2012年で 約80%減 |
| 設備保全費(実質ベース) | 同期間で 約75%減 |
| 売上高利益率(ROS) | 4.25% → 11.27%(2011年) |
ただし、注意が必要です。 この企業では同期間に設備投資・工場移転・製品構成の変化もあり、すべてが「5Sのみの効果」とは言えません。2012年には市況悪化でROSがマイナスに転じています。つまり、「5Sさえやれば必ず利益が出る」とは言えず、5Sは利益が出やすいオペレーション基盤をつくるものだというのがより正確な理解です。
ケース③:日本生産性本部の支援事例
国内の事例では、日本生産性本部の5Sコンサルティング支援事例として、次のような報告があります。
- 精密機械業(80人):1年で時間当たり粗利益額が40%向上
- 金属加工業(125人):半年で生産性20%向上
- 機器販売業・修理部門(50人):リードタイム35日→21日(40%短縮)
これらはコンサル事例の公表資料のため、詳細統計はなく参考値として扱う必要がありますが、現場の改善が明確なKPIに表れています。
医療・サービス業の事例
ケース④:タンザニア16病院のクラスター無作為化比較試験
これは5Sの研究の中でも特に信頼性の高いものです。16の地域病院を介入群・対照群に無作為に割り付け、外来患者3,292人を対象に12ヶ月間の5S導入効果を検証しました。
- 清潔度・総合満足度などが改善
- スタッフ行動に対する患者評価の改善は限定的
利益そのものは測定していませんが、5Sが「職場環境・サービス品質」を改善できることを、対照群と比較して示した研究として重要です。
ケース⑤:JICAの5S-KAIZEN-TQMプログラム(ザンビア病院)
JICAが支援するKAIZEN段階まで進んだ事例では:
- 待ち時間:43%削減
- 記録漏れ:52%削減
- 検査未実施率:63%削減
- 薬品在庫の廃棄・過剰:37%削減
ただしこれは5S単体ではなく、5SをベースにKAIZEN活動まで発展させた複合施策の結果です。
「5S=即利益」という誤解を防ぐために
ここまでのデータから見えてくることがあります。
5Sの効果として最も強い証拠があるのは「清潔度・探索時間・プロセス指標の改善」です。その次に「生産性・品質・リードタイム」の改善。そして「5S単体→営業利益」という直接的な因果関係の証拠は、相対的に弱いのです。
これは5Sが意味ないということではなく、「5S→オペレーションKPI改善→財務KPI改善」という2段階のプロセスがあるため、途中を飛ばして「5Sで利益が上がる」と断言するのはリスクがある、ということです。
税理士の方と話していても、「数字を見ると、整理整頓ができている会社の方が利益率が高い傾向はある。でも整理整頓が直接利益を出しているわけでもない」という話になりました。その感覚が、このデータとも一致しています。
次回予告
第5回では、「では実際に効果をどう測るか、どう数字にするか」という実践的な話をします。KPIの選び方とROI計算の方法を具体的に解説します。
【業務改善・5S支援のご相談】
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