こんにちは。三重県の中小企業診断士で経営支援、組織研修や業務改善研修をしていますエスモットです。
連載第3回です。前回は「探す・歩く・待つ」という人の動きに絡む見えないコストと、品質コストの話をしました。
今回は、在庫・設備・安全という視点から、整理整頓と利益の関係をさらに掘り下げます。
見えないコスト③:在庫と「寝ているお金」
整理(=不要なものを取り除く)が徹底されると、「あれ、こんなにあったの?」という在庫の発見が起きます。
在庫は財産のように見えて、実は会社のお金が「モノ」の形で眠っている状態です。
- 在庫があれば、それを置く倉庫面積・保管費がかかる
- 長く置けば、劣化・陳腐化・廃棄ロスのリスクが上がる
- 過剰な在庫は「必要以上に発注していた」サインでもある
整頓(=必要な量を必要な場所に)が機能すると、「今何がどれだけあるか」が一目で分かるようになります。すると、二重発注・過剰発注・欠品——こういったミスが起きにくくなります。
ただし、ここで一つ注意点があります。
整理整頓だけで最適在庫量が決まるわけではありません。 発注ロット・安全在庫・需要予測・発注点の設計が伴わないと、「見えるようになったが、判断基準がない」状態になります。整理整頓は在庫の可視化→補充ルール改善、という2段階で考えるべきです。
見えないコスト④:設備停止と保全費
清掃は「掃除」ではなく「点検」です——前回もお伝えしましたが、ここが設備コストに直結します。
整理整頓が崩れた現場では、機械の周りにモノが積まれて、ランプが見えない、オイルの滲みに気づかない、振動異常を感じ取れないことがよく起きます。
清掃しながら設備を点検する習慣があると:
- 油漏れ・緩み・摩耗の異常が早い段階で見つかる
- 計画的な修繕ができ、突然停止(急停止)が減る
- 設備停止コスト・保全費・機会損失が下がる
先ほどのセルビア・ゴム製品メーカーの事例では、同期間で設備保全費が約75%減少したというデータがあります。設備投資や改修も同時期に行われているため、5Sのみの効果とは言えませんが、清掃と設備保全のつながりは明確です。
税理士の方とも話していて出てきたのですが、「急停止のコストは、計画修繕のコストの数倍〜数十倍になることがある」という点。整理された現場はそれを防ぎやすいのです。
見えないコスト⑤:安全事故と休業コスト
通路に物が置かれている、床に油が垂れている、工具が乱雑に積まれている——整理整頓が崩れた現場は、安全リスクと作業ロスが同時に発生します。
労働安全衛生法では、4Sそのものが「安全で健康な職場づくりと生産性向上を目指す活動」と位置付けられており、通路確保や転倒防止が明示されています。
安全事故が起きた場合のコストは:
- 治療・補償費用
- 当該従業員の休業・欠員コスト
- 調査・再発防止対応の工数
- 場合によっては生産停止
これらは一度起きると非常に大きなコストになります。でも「ゼロ件だから整理整頓の価値がない」ではなく、「ゼロを維持できているのは整理整頓のおかげ」という視点が大切です。
まとめ:整理整頓が関係するコストの一覧
ここまで5つのコストを見てきました。整理します。
| 整理整頓が崩れると起きること | 関係するコスト |
|---|---|
| 探す・歩く・待つ時間が発生 | 人件費/単位↑・残業↑ |
| 取り違え・不良・見過ごしが増える | 品質コスト↑・返品↑ |
| 過剰在庫・二重発注が起きる | 在庫費・保管コスト↑ |
| 設備異常の発見が遅れる | 停止コスト・保全費↑ |
| 通路・作業場の危険が見えない | 安全事故・休業コスト↑ |
これらは全部、利益計算式の「コスト側」に影響します。売上が同じでも、これらが下がれば利益が残ります。
次回は、これを裏付ける実証データと業種別の事例を紹介します。
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