こんにちは。三重県の中小企業診断士で経営支援、組織研修や業務改善研修をしていますエスモットです。
前回の記事では、知り合いの税理士の方と「整理整頓ができていない事業所は利益率が低い」という話で盛り上がった話をしました。
今回は、その「なぜ」を具体的に説明します。
整理整頓が崩れた職場で何が起きているか。それは特別な事故でも大きなミスでもありません。毎日・全従業員・全工程で、小さな損失が積み重なり続けているのです。
利益の計算式から考える
経営の基本を整理します。
営業利益 = 売上高 − (材料費 + 人件費 + 品質コスト + 在庫・保管費 + 設備停止・保全費 + 安全損失 + その他費用)
整理整頓が主に作用するのは、売上高や需要ではなく、右側のカッコの中です。つまり、整理整頓は「もっと売れる」のではなく「もっと残る」ための活動なのです。
見えないコスト①:「探す・歩く・待つ」の積み重ね
工具が見つからない。書類がどこにあるか分からない。担当者に確認しないと何も進まない。
こうした「探す・歩く・待つ」は、顧客に価値を届けない「非付加価値活動」です。
実例を一つ。医療の現場では、病棟の物品配置を整理した後、輸液ポンプを取りに行く時間が「1分20秒から1秒に短縮」されたという報告があります。たった一つのものの置き場所を変えただけで、29種類の物品で合計12分07秒の短縮が得られました。
製造業の工場では、5S実施後に作業工程全体の作業時間がブロー工程8%、印刷工程18%減少したという事例もあります。
1人1日10分の短縮であっても、50人の職場・240日稼働なら年間2,000時間。その時間が増産・残業削減・人員の有効活用に変われば、利益への貢献は明確です。
見えないコスト②:「品質コスト」
定位置・表示・標準状態が明確になると、次のような効果が出ます。
- 「違う工具を使ってしまった」「戻す場所を間違えた」というエラーが減る
- 機械に付着したゴミや油が製品に影響する異常が早期発見できる
- 異常な状態なのに正常と見過ごすことがなくなる
不良品が減ると何が変わるか。スクラップ費・手直し人件費・再検査費・返品対応費・品質保証費——これらがすべて下がります。
製造業の縦断事例(セルビア・ゴム製品メーカー)では、5S導入から4年間でスクラップ費が実質ベースで約80%減少したというデータがあります。同期間に品質以外の外部要因も変化しているため、5Sのみの効果とは言い切れませんが、関連は明確です。
「コスト削減」は自動的に利益にならない
ここで一つ、大事なポイントをお伝えします。
「1日10分を短縮できた=時給×10分×人数分が即利益になる」——これは正確ではありません。
空いた時間を追加の受注対応・増産・残業削減・人員の有効活用に使って、初めて現金効果になります。整理整頓で「できること」が増えても、経営としてその余力を活用する仕組みがないと、利益には直結しません。
税理士の方とも話したのですが、整理整頓ができている会社は「余力を使い切る動き」も速い。だから利益率が高くなる、という循環があると感じています。
次回予告
第3回では、在庫・設備・安全という視点から、さらなる「見えないコスト」を解説します。
【業務改善・5S活動のご支援】
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