こんにちは。三重県の中小企業診断士で経営支援、組織研修や業務改善研修をしていますエスモットです。
新入社員を採用した企業から、こんな声を聞くことがあります。
- 「新入社員研修くらいなら、自分たちでできるのではないか」
- 「挨拶や報連相なら、わざわざ外部講師にお金を払う必要はない」
- 「実際の仕事は会社に入らないと分からないのだから、OJTで十分だ」
ある意味では正しい考えです。自社の商品・仕事の進め方・顧客との関係は、社内の人が教えた方がいい。でも、だからといって「新入社員教育はすべて社内でよい」にはならないのです。
人材も時間も限られている中小企業だからこそ、「社内で教えること」と「外部の専門家から学ぶこと」を意図的に分ける必要があると私は考えています。
新入社員研修は「マナーを教えるため」だけのものではない
名刺交換、電話応対、報連相――もちろん必要です。でも研修の目的を「ビジネスマナーを覚えてもらうこと」だけに設定すると、価値をかなり小さく捉えることになります。
新入社員研修の本来の役割は、学生から社会人への転換を支援し、組織の中で仕事を学んでいくための土台をつくることです。
入社したばかりの社員が分かっていないのは、仕事の知識だけではありません。
- 組織で働くとはどういうことか
- 分からないことはどう聞けばいいか
- 上司はなぜ報告を求めるのか
- ミスをしたときどう行動するのか
- 主体的に動くとはどういうことか
私はこれを「社会人として働くためのOS」と呼んでいます。パソコンもOSがなければアプリを動かせない。それと同じで、仕事の専門知識だけ教えても、報告・質問・振り返りの基礎がなければ仕事を身につけることができません。
新入社員研修=仕事そのものを教える場ではなく、新入社員研修=これから仕事を学べる人になるための準備と考えることが重要です。
中小企業ほど「採用後」の育成が重要になる
厚生労働省のデータでは、大学卒業後3年以内の離職率は全体で33.8%。さらに事業所規模が小さいほど高くなる傾向があります。
採用は人材確保のスタート地点にすぎません。入社後に「この会社でやっていけそうだ」「少しずつ仕事が分かってきた」と思える状態をつくれなければ、定着にはつながらない。
労働政策研究・研修機構(JILPT)の調査でも、初職を離職した若者は勤続している若者と比べて教育訓練や職場でのコミュニケーションが乏しい傾向が確認されています。新入社員研修は単なるイベントではなく、採用した人材を定着させ、戦力化していくための「採用後投資」なのです。
【経営者の視点①】「教えられる人」が本業から抜けることのコスト
「社内の管理職に教えてもらえばいい」は本当に無料でしょうか。研修内容を考える、資料を作る、当日説明する――その間、管理職は営業・マネジメント業務から離れます。社内講師にも機会費用が発生しているのです。
さらに問題なのは、仕事ができる人=教えることが上手な人ではないということ。厚生労働省「令和6年度能力開発基本調査」では、能力開発や人材育成について何らかの問題があると回答した事業所は79.9%に達しています。中小企業が社会人の基礎教育まですべて自前でつくることが、本当に最も効率的でしょうか。
【経営者の視点②】「自社の常識」だけで新人を育てないため
社内だけで教育していると、「自社で昔からそうしていること」がそのまま教育内容になります。外部講師を入れる意味の一つは、会社の外にある基準を持ち込むことです。
なぜ報告が必要なのか、なぜコミュニケーションが必要なのか――これらを原理・原則から説明することで、新入社員にとって「この会社独自のルール」ではなく「社会人として必要な考え方」として受け止めやすくなります。
【経営者の視点③】外部講師は「第三者」だから言える
社長が「もっと主体的に動いてください」と言うと、「社長に言われたからやらなければ」になりやすい。でも外部講師が「なぜ報告が必要なのか」をこう説明するとどうでしょう。
上司が意思決定するため。チームのリスクを小さくするため。仕事の遅れを早期に発見するため。本人を守るため。
すると「上司に言われたから報告する」から「仕事を前に進めるために報告する」へと意味が変わります。外部講師の役割は会社の指示を代わりに伝えることではなく、会社が求める行動と社会人として必要な原理・原則を接続することです。
【経営者の視点④】新人教育の「品質」をそろえられる
OJTには弱点があります。「誰について学ぶかによって教育内容が変わる」ことです。A先輩は「すぐ聞いて」、B先輩は「自分で考えてから聞いて」、C上司は「自分で判断して」。新人は混乱します。
製造現場で作業者によって作り方が違えば品質が安定しない。だから作業標準をつくる。人材育成も同じです。外部研修によって社会人としての基礎部分を共通化しておけば、その後のOJTが行いやすくなります。
【経営者の視点⑤】中小企業ほど体系的なOFF-JTを受ける機会が少ない
大企業に入社した新人は新入社員研修・フォローアップ研修・eラーニングなど体系的な教育を受けられます。一方中小企業では「今日から○○さんについて仕事を覚えて」から始まることも。すると成長が「どの会社に入ったか」だけでなく「どの先輩についてしまったか」に大きく左右されるリスクが生まれます。
教育専門部署を持てない中小企業ほど、外部資源を上手に利用する意味がある――次回は新入社員本人にとっての意味と、理想的な育成サイクルをお伝えします。
【新入社員研修・人材育成のご相談】
エスモット(中小企業診断士・数本優)まで、お気軽にご連絡ください。




コメント